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海外PL保険を選ぶときに注意すべき点とは
1995年7月1日にPL法(製造物責任法)が施行され、その後民法の不法行為責任(民法第709条)の特則として設定されました。これにより、それまでは製造物の欠陥が原因で消費者等が被害を被ったとしても製造者の過失を証明することができなければ製造業者に責任を問うことができずに被害者が損害賠償を求めることができなったものが、被害者が製品の欠陥を証明することができれば、製造業者の過失の有無に関係なく製造業者に損害賠償責任を求めることができるようになりました。すなわち製造業者に過失がなくても損害賠償責任を負わなければならなくなったということです。今回は、海外へ輸出した製品に起因するPL事故を補償する「海外PL保険」についての情報を提供させていただきます。今や海外輸出企業だけのリスクではありませんので、ご参考いただけましたら幸いです。
【目次】
1. 海外PL保険とは
2. 海外PL保険選びの注意点
3.今回のまとめ
海外PL保険とは
海外PL保険は、製造または販売した製品(生産物)に起因して、海外で他人の身体の障害または他人の財物の損壊による事故が発生した場合に負担する法律上の損害賠償責任を補償する保険です。
品質管理を徹底し、マニュアルや警告文を整備するといったPL 事故の発生を未然に防ぐための対策を行うことはできますが、海外では言いがかり的な訴訟も多く、どれだけ対策をしていても防ぐことができない PL 事故は残念ながら発生しています。海外 PL 保険への加入は、日本国外に製品(生産物)を輸出する製造業者・販売業者(完成品メーカーや素材・部品メーカーまたは輸出商社など、海外に輸出される製品の流通にかかわる企業)にとって必要不可欠なリスク対策であるといえます。海外PL保険へ加入する理由は、輸出製品のPL事故への備えとしてだけでなく
・取引先からの付保要請を受けた
・原材料や部品を納入している場合に完成品メ-カ-等からの求償に備えたい
・他社ブランドの製品の製造・販売を行っているため(OEM)
・ECサイトを通じて海外への販売を行っているため
など様々ですが、国内で販売した製品が訪日観光客などにより知らない間に国外へ流出し、海外でPL事故が発生するといったケースもでてきているため、多くの製造・販売に関わる企業において無関係とはいえないリスクとなっています。
海外PL保険選びの注意点
「海外PL保険」は海外で発生するPL事故のリスク対策として加入するものですが、事故が発生した国や地域により適用される法律は異なります。訴訟の多い米国においては、州によって法律が異なっているだけでなく、訴える原告側が自分の立場や主張に都合の良い州で訴訟を提起することもあるため、訴訟地が適格であるかどうかも含めた判断が必要となります。また、被害者の主張の確認、損害の調査、製品の欠陥と損害との因果関係の分析など、各分野の専門家との連携などを事故状況の把握や分析も必要です。訴訟が公になると、被害者の弁護士が新聞広告やインタ-ネット、SNS等で被害者を募り訴訟の拡大や連鎖クレームとなることもあるため、そのような状況を回避するための戦略や事故内容や製品の種類、訴訟提起国(州)の法律などを踏まえて弁護士を選定し、より良い解決策を選択するといった必要もあり、海外での賠償事故対応は国内とは比較できないほどの費用や労力を要します。このような理由からも後悔しない海外PL保険を選ぶ必要があります。
≪海外PL保険を選択する際にチェックすべき点≫
・適用される海外の法律を正しく解釈した上で対応できるか
・海外での事故状況をきちんと把握し分析した上で対応できるか
・同種の連鎖クレームを断ち切るための戦略作りに対応できるか
・訴訟で争うことのメリット・デメリットを分析した上で対応できるか
・訴訟発生時に、現地弁護士との連携による応訴体制が構築されているか
海外での事故に備えるには、国際的なネットワ-クがあり、国外における事故対応の経験が豊富である保険会社であることはもちろんですが、
・争訟費用が外枠払いであるかどうか
・損害賠償請求ベース、事故発生ベースの選択ができるかどうか
も非常に重要です。
≪争訟費用外枠払いとは≫
争訟費用を損害賠償金の支払限度額と関わりなく支払われる方式。「外枠払方式」の場合、損害賠償金の限度額を消費するまで争訟費用が全額支払われます。
≪損害賠償請求ベース(クレームズメイド方式)≫
製品(生産物)に起因する対人・対物事故に基づく最初の損害賠償請求が保険期間中に提起された場合に補償の対象とする方式。
※対人・対物事故が保険証券記載の遡及日以降に発生した場合に限ります。
≪事故発生ベース(オカーレンス方式)≫
製品(生産物)に起因する対人・対物事故が保険期間中に発生した場合に補償の対象とする方式。北米や欧州などへ輸出する場合、「事故発生ベース(オカーレンス方式)」に基づく保険加入を求められることが頻繁にあるため、取引先企業からの要請に対応できるものであるかどうかを確認する必要があります。
※AIG損害保険HP「グローバルリスクマネジメント」「海外PL保険」より
今回のまとめ
「賠償責任保険」の基本補償では国内でのPL事故に対応する「リコール費用」は補償されません(※特約を付帯することで補償可能)。海外PL保険においても同様ですが、特約を付帯することでリコールによる回収費用やメ-カ-・販売先が負担した回収費用に対する法律上の損害賠償責任、社告費用、輸送・保管費用などのほか、リコールに伴って対象製品の交換、修理、再仕入等を行う場合の費用まで補償可能なプランを取り扱っている保険会社もございます。海外での賠償事故対策について詳しく知りたい、という方はお近くの保険代理店までお気軽にご相談ください。
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