名古屋市の損害保険・生命保険代理店なら保険ポイント「お知らせ・コラム」ページ

お知らせ・コラム

改修工事をおこなう建設業者が養生不足により高額賠償事故を起こしてしまった事例とは

改修工事をおこなう建設業者が養生不足により高額賠償事故を起こしてしまった事例とは

建設業ではときに1億を超えてしまうような事故も想定しなければならないこともあります。日常の業務ではなかなかイメージのつきにくい高額賠償事故について、事例をもとにご紹介していきます。

【目次】

1.3億円を超える高額賠償事故とは

2.発生原因と未然防止策とは

3.今回のまとめ

 

3億円を超える高額賠償事故とは

今回は建設業で起きた3億を超える高額な賠償事例をご紹介します。

事故概要

建物の改修工事において、溶接を担っていた下請業者が作業をしていたが、溶接の際に発生した火花が階下店舗に落下、商品に引火し火災が発生しました。隣接する建物にも延焼し、合計2棟が全焼してしまいました。

事故の内容

・施主の店舗は衣類や日用生活道具などを取り扱っていて、2階の空きスペースに新たに事務所を増設する工事をおこなっていました。

・下請業者が溶接作業を担っていましたが、作業時に火花が階下に落ち、その付近に置いてあった商品の衣類などに引火し、火災が発生しました。

・建物には、スプリンクラー、防火カーテン、火災報知器はありませんでした。

・火元の店舗と隣接する建物とは通路でつながっていましたが、そこには可燃性の高い商品が陳列されていたために、これが導火線となって延焼しました。

・通路の両側には防火シャッターが設置されていましたが、商品などが障害となって下がらない状態でした。

・その建物に消防が進入できる箇所は限られていたため、消火に手間取り、2棟とも全焼してしまいました。

・作業前、防炎シートをかける見積りを施主に提示しましたが、予算の都合で断られていました。

・被害は、建物2棟の全焼のほか、さらに別のもう1棟に延焼し一部焼損しました。

解決までの経緯

①事故を起こした下請業者が賠償保険に加入していないことが判明。

②商品や建物の損害については各被害者加入の火災保険に請求。

③各被害者からの損害賠償請求と保険代位求償の合計が総額4億円の見込みに。

④火災保険の対象とならない損害について、被害者が元請業者に賠償請求(合計3000万円)

⑤火災保険の引受保険会社が元請業者に代位請求(合計3億7000万円)

⑥事故から6年後、各被害者との和解が成立。損害賠償額は総額3億円に。

解決までの対応ポイント

下請業者の賠償保険加入について

事故状況・発生原因・現場責任者・指示命令系統などによって、元請業者、下請業者等現場に関連する各事業者の法律上の賠償責任の有無や、過失の割合が決まります。

・本件では、下請業者が第三者賠償保険に加入していないことがわかり、元請業者が1社で各被害者からの損害賠償請求に対応しました。

元請業者が下請業者を被保険者に含む賠償保険に加入していれば、下請業者の賠償責任分についても支払われますが、下請業者も個別に賠償保険に加入しておくことで、建設現場における第三者賠償事故時の費用の責任に応じた分担が可能となり、賠償リスクへの補償が手厚くなります。

失火責任法の重過失について

・失火責任法では、失火の場合には重過失がなければ不法行為責任を負担しないとされていますが、この事故の場合は養生不足が明らかでしたので、溶接を行った請負事業者に重過失があったと言わざるを得ず、不法行為による損害賠償責任ありという判断になりました。

・最近の判例では、建設業者などが業務として行った作業中に、養生不足等により溶接火花が作業範囲外に飛散した場合は、重過失と評価されやすい傾向があります。

・また、施主が被害者となった本件の場合、請負事業者側には債務不履行責任もあります。債務不履行責任については失火法は適用されません。なお、類焼先に対しては不法行為責任のみを負います。

保険金額の不足

・各被害者は、自身で加入していた火災保険の対象となっていた損害については保険金の支払を受けましたが、保険の対象となっていない損害(設備什器、家賃損害等)については元請業者に直接請求しました。

・火災保険で保険金を支払った損害に対しては、その損害賠償請求権は保険会社に移転し、元請業者は各保険会社から代位求償を受けました。

・全被害者(保険会社からの求償を含む)から合計4億円の損害賠償請求を受けた元請業者が加入していた賠償保険の保険金額は1億円でした。各々と示談、調停、裁判の結果、損害賠償の総額は3億円となりましたが、そのため2億円は自己負担する結果となりました。

・裁判で判決となった場合に生じる遅延損害金は、不法行為を理由とする損害賠償の場合は不法行為日から起算されますが、裁判が長期化すると遅延損害金が高額になります。訴訟の場合はこの点も考慮して対処する必要があります。

発生原因と未然防止策とは

発生原因

①防炎・防火のための基本的な養生が不十分だったので、溶接時の火花が作業スペースの隙間に入り込み、階下の可燃物に引火したこと。

未然防止策

・溶接・溶断時は「撤去」「覆う」「監視」が重要です。

・作業スペースの周辺や階下からは可燃物を完全に「撤去」します。そしてできるだけ広範囲を防炎シートで「覆う」必要があります。特に構築物や養生シートの隙間に火花が入り込んでしまうと気がつかないうちに火災が進行してしまうので、防炎テープでしっかり目止めします。さらに作業終了後2時間は現場を「監視」し、火花がくすぶっていないか注意を払います。

発生原因

②作業現場の安全確保の確認不十分。誤った作業手順と施主への説明不足

未然防止策

・溶接・溶断など火を使用する作業の場合は、火災発生の危険性を施主に十分説明し理解を得たうえで、必ず防災・防火の処置を行います。また、万が一火災が発生した場合を想定し、被害が最小限で済むよう各種対策への協力を求め、安全の確保が確認できるまで作業を行わないようにすることが大切です。

今回のまとめ

今回のケースのように保険会社が保険金を支払ったあとに求償ということで責任ある場所へ請求が行われることがあります。万が一の高額賠償にそなえて工事賠償保険を検討してみてください。

 

工事の賠償保険のことなら株式会社保険ポイントへお任せください。

TEL>052-684-7638

メール>info@hokenpoint.co.jp

 

お電話、メール、どちらでもお待ちしております。