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現場責任者がストレスによる胃潰瘍で死亡

現場責任者がストレスによる胃潰瘍で死亡

近年、精神的な疾病を発症する社員が増加しており、労災申請するケースも増加しています。業務でのストレスや長時間労働が原因での脳疾患や心疾患、胃潰瘍やうつ病などがあります。業務に起因するか否かの判断が難しい場合もありますが、業務に起因するものと判断され、労災認定されるリスクを経営者は認識し社員の健康について十分配慮する必要があります。今回は、建設業の現場監督が「胃潰瘍」により死亡し、労災申請されたケースについてご紹介していきます。 (労働新聞社 安全スタッフ2025年7月号 参照)

 

【目次】

1.災害の内容

2.労災認定されなかったケースも

3.今回のまとめ

 

1.災害の内容

災害のあらまし

建設現場で現場責任者として勤務していた62歳の社員が、出血性胃腸炎を発症して自宅で倒れてその後死亡してしまった。発症した胃潰瘍が、労災認定基準の示されていない「その他業務に起因することが明らかな疾病」に該当するか否かが判断された。結果として今回のケースは、医師の診断内容や長時間労働、精神的ストレスなどの状況により発症したものとして業務上と認定されました。

労災認定の根拠

①現場責任者として施主や元請けとの工期や仕様変更についての困難な交渉などがあり精神的ストレスになったこと

②徐々に業務が多忙となり、月100時間以上を上回る長時間労働となったこと

③発症までの時間的経過の合理性が認められること。またこれらの点を裏付ける医師の診断書には、業務による精神的ストレスが胃潰瘍の発症に強く影響した可能性が高いと明記されていたこと

「その他業務に起因することが明らかな疾病」とは

労働者がり患した場合、それが業務に起因するものと認められれば、労働者災害補償保険法に基づく補償の対象となります。労働基準法第75条2項では業務上の疾病は厚生労働省が定めるとしており、労働基準法施行別表では業務上の疾病が第1号から11号まで例示列挙として掲げられています。

業務上疾病 第1号から第11号

【第一号】 業務上の負傷に起因する疾病

【第二号】 物理的因子による疾病

【第三号】 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病

【第四号】 化学物質による疾病

【第五号】 粉塵を飛散する場所での業務によるじん肺症とじん肺合併症

【第六号】 細菌、ウイルス等の病原体による疾病

【第七号】 がん原性物質もしくはがん原性工程の業務による疾病

【第八号】 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止もしくは解離性大動脈瘤またはこれらの疾病に付随する疾病

【第九号】 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神および行動の障害またはこれに付随する疾病

【第十号】 前各号に掲げるもののほか厚生労働大臣の指定する疾病

【第十一号】 その他業務に起因することが明らかな疾病

今回の「胃潰瘍」での労災認定は列挙されている疾病では無かったが、総合的な判断によりその他業務に起因することが明らかな疾病とみなされました。

2.労災認定されなかったケースも

前述の「胃潰瘍」の労災認定については個々の事例における具体的な業務内容、労働時間、ストレスの程度などが総合的に考慮され業務と疾病との間の因果関係が認められました。一方で労災認定されなかった「胃潰瘍」の発症事例もあります。

事務職である労災の請求人が事業場の人間関係によるストレス、パワーハラスメント、嫌がらせ、いじめが原因で「胃潰瘍」を発症したと主張した。医師の意見書では、胃潰瘍の発症原因や発症メカニズムは不明で業務との因果関係も不明とされた。別の医師の意見書では過去のピロリ菌感染が指摘され、萎縮性胃腸炎を認めることから胃潰瘍にり患しやすい状況であったと考えられ、物理的・身体的ストレスや精神的・心理的ストレスも胃潰瘍の誘因となるものの、業務との間に相当の因果関係を認めるのは困難との記載があった。これらの医学的所見を含めて胃潰瘍の労災請求は労災とは認められませんでした。

疾病労災の認定のポイント

①具体的な業務内容と発症状況の記録:どのような業務に従事しどれくらいの労働時間であったか、また発症に至るまでの経緯を具体的に記録しておくことが重要となる

②ストレス要因の明確化:業務上のストレスがどれほどあったのか、具体的なストレス要因(例:長時間労働、パワーハラスメント、人間関係の悪化など)を明確にする必要がある

③医学的所見の収集:医師の診断書や意見書など医学的な所見を収集し、業務と疾病との因果関係を示す必要がある

3.今回のまとめ

事業者は、労働者に対して安全な職場を提供する安全配慮義務があり、労災事故が発生した場合は発生原因を追究し改善が求められます。病気での労災申請でも同様に発生までの経緯や内容を調査し、事業主や企業側に落ち度があれば安全配慮義務違反として訴えられてしまう危険性もあります。2025年の6月より熱中症対策の義務化も始まり、今後ますます従業員の健康状態に留意しながら職場環境を整えていくことが求められそうです。また、労災上乗せ保険等の民間の保険では万一のケガや病気の補償に加えて様々の健康サービス等も付帯されているので気になる方は、是非お問い合わせください。

 

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