お知らせ・コラム
職場のパワハラと対応する保険について
営業関係の職種の方はもちろん建設業をはじめ運送業や製造業など様々な業種の方からパワハラ保険や職場でのパワハラについて質問を受けることが増えました。事実として雇用慣行賠償責任保険と呼ばれるパワハラ・セクハラ・不当解雇等に備える保険への中小企業の加入率はここ数年急激に増加しています。今回はパワハラの事例と労災における精神障害の労災認定基準について触れていきたいと思います。(労働新聞社 安全スタッフ11月1日号参照)
【目次】
1.上司から怒鳴られ、適応障害の診断書
2.業務による心理的負荷評価表で判断
3.今回のまとめ
1.上司から怒鳴られ適応障害の診断書
災害の内容
Aは営業の仕事に従事していた。Aによると事業場内において上司のEから怒鳴る、机を叩く、蹴るなどの暴力的行為を受け激しい動悸と手の震えで恐怖心が収まらなかったという。Aはその後クリニックを受診し「適応障害」と診断された。
判断
Eの日常的な言動が業務指導の範囲を逸脱したものであったとは認められずAが発病した本件疾病は業務外の判断となった。
解説
本件についてAの主張は、Eが机を一回叩き、机を一回蹴り、一分間くらい怒鳴るなどをするとともに「メンタル弱いんじゃないか」などと不適切な発言をするなど業務指導を逸脱した言動があったと述べている。一方、Eは怒鳴った後にAが怯えている様子はなく「訴えてやる」と発言しさらに「いまから病院に行くから継続して仕事は出来ません」といって午後から休みを取ったと述べている。会社作成の報告書によれば就業中にAに対しEが怒鳴る、机を叩くことはあったがAに対して手を挙げる、蹴るなどの暴力行為は一切なかったこと。また多少感情的に叱責・注意することはあったが業務上の範囲を著しく超えるものでは無かったことをEから確認している。以上からEを叱責する際に机を叩き感情的な発言を行っていたものと推認されるものの、暴力行為があったものではなく短時間で収束し執拗に行われたものでもなく出来事後の継続性も認められないことも併せて総合的に考察すればこの出来事による心理的負荷の総合判断は「中」であると判断した。
2.業務による心理的負荷評価表で判断
業務による心理的評価表による評価
業務に起因する精神障害はケガなどと同じで労災の対象になる。しかしその判断基準は通常のケガとは異なる。厚生労働省では労働者に発病した精神障害について仕事が主な原因と認められる判断の基準として「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めこれに基づいて労災認定を行うことにしている。また精神障害が労災認定されるのはその発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られる。最近は上司からの業務指導の範囲内の叱責などでも自分の主観だけでパワハラと決めつける人も多い。さらには「適応障害で休職が必要である」という診断書を提出して労災請求する人もいる。行政の認定実務では職場で生じた「パワハラ」的行為をまず「業務による心理的負荷評価表」に列挙された具体的出来事に当てはめ、続いて事案ごとの心理的負荷強度を評価するために同表に示されている「心理的負荷の強度を弱・中・強と判断する具体例」に当てはめて個別事情を顧慮した心理的負荷強度の評価を行う。
心理的負荷強度が「強」と判断できるパワハラの具体例
①上司などから治療を要する程度の暴行などの身体的攻撃を受けた場合
②上司などから暴行などの身体的攻撃を執拗に受けた場合
③上司から人格や人間性を否定するような業務を明らかに必要性がない、または業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃を執拗に受けた場合
④上司から必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威嚇的叱責など態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃を執拗に受けた場合
⑤心理的負荷としては「中」程度の精神的攻撃、身体的攻撃を受けた場合であって会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった場合などが挙げられている
以上の基準はあくまでも労災の認定基準になります。精神障害の労災認定は「パワハラ」に該当するかどうか認定ではないため「パワハラ」に該当する行為があったとしても労災認定されない場合もあるし「パワハラ」に該当しない行為でも労災認定される場合もあり得ることに留意が必要である。
保険での備え
不当雇用慣行賠償責任補償では主に「不当雇用慣行」と「第三者ハラスメント」などのトラブルに対応しています。損害賠償請求された、不当解雇による未払い賃金相当額や慰謝料、弁護士費用などの争訟費用などが対象となります。
不当雇用慣行とは
・不当解雇または不当な雇用関係の終了(雇止めなど)
・雇用に関するパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等
・雇用に関する不当な差別行為、懲戒行為など
第三者ハラスメントとは
役員または従業員が業務の遂行上、またはその地位に関連して役員及び従業員を除く個人に対して行ったハラスメントまたは名誉棄損など
注意点
雇用契約などの契約または法令に違反することを知っていながら行った行為や役員や管理職の人などが暴力行為を行った場合なども補償の対象とならない可能性があります。また在職中の労働の対価として支払うべき賃金や残業代や退職金などは対象となりません。(詳しい補償内容は保険会社や代理店にお尋ねください)
3.今回のまとめ
職場でのパワハラが即座に労災認定や労災訴訟に繋がる訳ではありませんが、会社として対処をお怠り放置すると大きな問題に発展する可能性はあります。パワハラやセクハラ、不当解雇などのトラブルは自社の従業員に対して気をつけるだけでなく取引先の社員や就活生など外部の人間に対しても気を付ける必要があります。また、自社の社員が外部の人からパワハラを受けた場合も従業員の配置転換や担当替えなどを行うことにより従業員を守る措置を講ずる必要があります。雇用トラブルの補償など気になる方は是非お問い合わせください。
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