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下請の被災で元請けに安全配慮義務違反

下請の被災で元請けに安全配慮義務違反

建設業における請負契約の下請け作業員が、解体工事中に転落し左側上下肢まひの障害が残り後遺障害等級5級と認定された事案のご紹介です。被災者は労災保険からも休業補償や障害補償も受給しているが、元請け企業に対して労働者賠償額として約4185万円(過失相殺や各種損益相殺あり)の支払い命令が出ています。建設業では、従業員はもちろんのこと下請けに対しても安全な職場を提供する安全配慮義務が発生しますので、万一、下請け作業員が重大な労働災害に被災した場合には安全配慮義務違反で訴えられてしまう可能性もあります。今回は、実際の事例をみながら元請け責任について触れていきたいと思います。

 

【目次】

1.解体工事現場での事故

2.安全配慮義務のポイント

3.今回のまとめ

 

解体工事現場での事故

◎事件の概要

Y社は、油圧機械の製作、販売、再生加工を目的とする会社である。Y社はスリランカ国籍のA1さんが代表者とするA社に対して、工場内に設置された金属製の棚をガスバーナーで溶断して解体する工事を依頼した。A社には人手が無いとしてA1さんの義理の弟でスリランカ人のXさんと本件解体工事を請ける旨をY社に伝えたところ了解を得たため、A社とXさんは共同で解体工事を請けることにした。Xさんは、その解体工事でY社の代表者から新品のガスバーナーを提供されそれを使用した。A1さんとXさんはY社の代表からの指示で、棚の天板(高さ1.97m)の上に乗り、ガスバーナーを使用して天板を途中まで溶断し、天井クレーンのワイヤで固定し完全に溶断して地上に降りて、天板をトラックに積み込むという作業を繰り返しおこなった。途中で溶断中の天板がA1さんに激突しそうになるなど、かなり危険な作業であった。その後、A1さんおよびXさんが天板の上に乗って、天板の溶断をしていたところ、Xさんが乗っていた部分が倒壊してXさんは地上に転落した。Xさんは急性硬膜化血腫の開頭除去手術を受けるなどして、後遺症により左側上下肢まひの障害が残った。XさんはY社に対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求を提起した。

 安全配慮義務のポイント

元請であるY社及びY社の代表が安全配慮義務違反で提訴されたが、安全配慮義務違反と指摘された内容に注目してみよう。

◎判決の趣旨

Y社と原告Xさんとの関係

XさんとY社との間で直接労働契約が締結されたとまでは認めがたいが、Xさんは少なくともA社の下請けの立場であったものと認めるのが相当である。ただしY社の代表者は作業現場で直接作業しており、天井クレーンも操作している。さらに直接Xさんに新品のガスバーナーを交付したり作業指示もしており、Y社とXさんのとの間の請負契約関係を認めることも可能な事案であるように思われる。その場合も当然に安全配慮義務違反は発生する。

墜落防止措置

労働安全衛生規則第518条は2mを超える高所作業を行う場合、墜落による危険を及ぼす恐れがある時は作業板を設けなければならない旨や作業板を設けることが困難な時は墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない旨を定めている。本件解体工事が行われている棚の天板の高さは1.97mであり直ちにY社が労働安全衛生規則に違反したとまでは認められない。しかしながら、1.97mの高さが労働安全衛生法で措置が必要な高さとほぼ同等水準であるため、必要な措置を採ることが望ましいといえる。これらの措置を採らないとしても、一定程度墜落の危険性がある本件解体工事に従事させる以上、Y社には少なくともヘルメットを着用させる、安全教育などの措置を採るなどの義務があったと考えられる。それにもかかわらず、Y社は、Xさんに対する安全配慮義務に違反したと認めるのが相当である。

A1さんの過失の考慮

A社およびA1さんにも本件事故についての一定程度の過失が認められる。A1さんはXさんの姉の夫であり義理の兄弟関係にあたる。しかし別会社に勤めており生計は別である為、本来はA社およびA1さんにも安全配慮義務違反として損害賠償責任を負う事になるのだが今回は、身内ということもあり訴訟の被告側から外れている。ただしY社が負担した損害賠償分のうち、A社の責任分をY社が負担を求めることは出来ると考えられる。なお、後遺障害等級は5級と認定され労働者賠償額は過失相殺され、各種損益相殺があり約4185万円となっている。

今回のまとめ

従業員や下請け作業員が重大な労働災害に被災した影響で、建設会社が倒産してしまう事があります。当然、何億や何千万円の損害賠償金の支払いが困難であることが一番の原因ですが、事故を起こしたことにより元請けやお客さんとの関係が悪化し売り上げが大きく落ち込んだり、訴訟に対応するために多くの時間を割かれる為です。適切に保険に加入する事により、損害賠償金や慰謝料、訴訟費用などに対応することができますが、やはり安全第一で作業を行うことが企業にとって一番大切なことかと思います。

 

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