お知らせ・コラム
カスハラを許さない!組織的対応へ
精神障害の労災認定基準に「カスタマーハラスメント」が加わり、企業にとって対策の必要性が一段階あがったといえます。業態によってはメンタルヘルス不調を招く原因の一つと位置付けたうえで体制整備に本腰を入れたいところです。皆様の企業では、従業員を顧客からの無理な要求や暴言から守る対策作りができているでしょうか?
【目次】
1.厚生労働省の「カスハラ」に対する見解
2.見過ごせない、「カスハラ」の実態
3.企業の「カスハラ」に対する取り組み
4.今回のまとめ
厚生労働省の「カスハラ」に対する見解
厚生労働省は2023年9月、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正し、負荷の判断基準となる具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」を追加しました。いわゆるカスハラが評価要素に加わったということで、さらにその強度を「強」と判断する際の具体例として「顧客等から威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた」などを示しています。企業にとって労災認定を受けた事実は安全配慮義務違反に問われる可能性を高めます。離職やメンタルヘルス不調による休職を防ぐに留まらず、組織としてのリスク管理の面からもカスハラ対策の必要性は急務といえるでしょう。
見過ごせない、「カスハラ」の実態
顧客からの嫌がらせや迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を直近1年間に受けた人は64・5%に上るとの調査結果もあります。土下座強要や長時間の居座りなどを経験した人もいます。カスハラから従業員を守れないと、人材確保に大きな影響を及ぼすことは必至でしょう。ここではカスハラの具体的事例を取り上げてみます。
【事例1】
衣料品店において子連れの主婦が、着用済みの洋服の返品を要求。それが受け入れられないと次は「交通費を出せ!」と店員を脅迫。交通費の請求を拒むと、激怒した主婦は店員に土下座を強要。さらに、土下座させた写真を自身のSNSに投稿した。その後、店が警察に被害届を出した結果、刑事事件として主婦は逮捕された。
【事例2】
コンビニで1万円札を使い会計。その際、お釣りを小銭から先に渡され、紙幣をもらえないと勘違いした男性が激怒。女性店員に対し殴るような真似をしたうえで土下座を強要。店側が通報し逮捕された。
【事例3】
携帯ショップに文句を言いに来た客が、開店の10時から14時間にもわたって居座り、店側には非が無い理不尽なクレームを一方的にぶつけた。
【事例4】
ホテルにて一番リーズナブルな部屋を予約した男性客が、チェックインのあと「部屋が狭いから部屋を変更しろ」と要求。満室だと断るとどうにかしろと強い口調に。仕方なく近くにある別のホテルを案内したところ、別ホテルに宿泊する費用と移動に使うタクシー代を請求。それを断ると対応したスタッフの名前を出してネットの口コミ欄にクレームを書いた。
いかがでしょうか。これらの行為は、店側が悪質と判断し警察に通報すれば「脅迫罪」「強要罪」「暴行罪」「不退去罪」等問われる可能性のある、つまり刑事罰に該当するような行為なのです。お客様だからといって何を言っても、やっても許されるわけではありません。
企業の「カスハラ」に対する取り組み
企業としてはカスハラが今後生じることを想定し、以下の3つの対応を準備しましょう。
①企業としてのカスハラに対する基本方針を従業員に周知する
企業として、カスハラに屈せず適切な対応を取るという、カスハラ対策の基本方針を従業員に示します。企業が従業員をカスハラから守る姿勢を示すことで、従業員の安心に加え、日頃から従業員の心身の安全に注意を払っているという「安全配慮義務の遵守の姿勢」を示すことにもつながります。
②従業員のための相談窓口の設置など体制の整備
カスハラを受けた従業員が相談できる窓口を社内に設置し、周知します。厚生労働省の調査によると、カスハラを受けた従業員の48.4%が社内の上司に相談し、次いで社内の同僚が34.0%、次に多いのが何もしなかった24.3%となっています。そこで、順序としては、以下の3点を決めておくことをお勧めします。
□相談先となる上司の決定(どの役職の上司に相談すべきか)
□上司が報告相談すべきカスハラ対応の本社部門の決定(人事部や総務部)
□法的な対応に備え、法務部門や外部(顧問弁護士等)との連携フローを決定
③社内ルールの従業員への研修など
カスハラ対応について、日頃から従業員に対応方法について定期的に研修を行います。またマニュアルなどを用意し周知しておきましょう。
今回のまとめ
企業経営において従業員の離職や経営の危機にもなりかねないカスタマーハラスメント被害ですが、悪質なクレームは時に犯罪行為に該当する可能性があることを念頭に体制整備を強化しましょう。また企業には従業員への安全配慮義務があることを決して忘れてはいけません。従業員がケガをしたり、心身の健康を害した時に企業側がなにも対応策を講じていなかったとすれば、安全配慮義務違反となり、損害賠償責任を負うことにもなりかねません。従業員のリスクに対応できる補償の整備、対応マニュアルの作成、各部署との連携やハラスメント研修など十分に対策を講じるようにしましょう
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