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建設工事に求められる責任と自然災害

建設工事に求められる責任と自然災害

建設業には「従業員のケガのリスク」「損害賠償責任リスク」「工事対象物のリスク」といったリスクが存在します。従業員のケガのリスクには「労災上乗せ保険」、損害賠償責任リスクには「賠償責任保険」、工事対象物のリスクには「建設工事保険」「組立保険」「賠償責任保険の工事用物損害特約」等で備えることができ、建設事業者の皆さまにとって欠かすことのできないリスク対策となっています。では通常業務ではない災害時の復旧活動において建設事業者の責任はどうなるのでしょうか?今回は、災害時の復旧活動における建設事業者の責任とリスク対策について情報提供させていただきます。

【目次】

1. 建設事業者の民事責任

2 災害時の復旧工事の課題

3. 今回のまとめ

 

建設事業者の民事責任

建設業者が第三者に対して負う民事責任は、建築工事中に第三者に損害を与えた場合に負う「不法行為責任(民法709条)」です。また、建築した建物の欠陥に起因して第三者に損害を与えた場合の責任についても一般的に認められています。ただし、建築した建物の欠陥に起因して第三者に損害を発生させた場合に必ず責任を負うというわけではなく、建設業者の故意または過失によって事故を発生させた場合にのみ責任を負うことになります(結果責任ではなく過失責任)。ここでいう「過失」とは、発生した事故について「行為者が事故発生の危険を予見できた可能性(予見可能性)」、「予見した事故を回避できた可能性(結果回避可能性)」があるのにもかかわらず、事故を生じさせることをいいます。請負業者が災害の復旧工事(救援)を請け負った場合であっても、その作業によって第三者に損害を与えたときには、同様に不法行為責任を負う可能性がありますが、請負業者に過失があったかどうかの判断は、復旧(救援)時における状況の特殊性も考慮されます。自然災害による事故においては、その災害規模が想定外に大きかったこと、施工上の基準がなかったことなどを理由に事故を予見できなかった、回避することができなかったとして、過失の存在と同時に責任が否定されることがありますが、これらは現在の知見によって判断されます。

その為、東日本大震災・大型台風や洪水等を経験する以前であれば、故意・過失(予見可能性、結果回避可能性)がないと判断されたケースでも、現時点で同様の事故が起こった場合には過失があると判断される場合があるのです。災害の場面において建設業者が民事責任を負う可能性は、今まで以上に高まっていると言えるのではないでしょうか。

※AIG損害保険「新・担い手3法の成立や最近の傾向からの災害時において建設業者が負う民事責任と補償について」より

災害時の復旧工事の課題

では、復旧工事・災害救助・ボランティア中に第三者に損害を与えた場合の責任はどうなるのでしょうか?一般的な業務中の事故ではなく、復旧工事・災害救助・ボランティアに従事している中で第三者の所有建物を毀損させてしまった場合や第三者に怪我を負わせてしまった場合、それが無償の活動であったからといって責任を免れるわけではありません。実際に無償の奉仕活動であるボランティアの起こした事故において、責任が軽減されず「通常人であれば尽くすべき注意義務が要求される」と判断された裁判例もあります。

(東京地判平成10 年7月28 日判例時報1665 号84 頁)。

また労災補償は業務災害または通勤災害において必要な保険給付を行う制度ですが、「業務上の災害」には、「業務起因性」と「業務遂行性」が必要であるとされています。具体的には「労働者が事業主の支配ないし管理下にある中で、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいますので、地震、台風など天災地変によって被災した場合には、原則として「業務起因性」「業務遂行性」は認められないことになるのです。業界団体からの要請に基づいて従業員を被災地へ派遣させる場合や第三者の救助については労災補償がなされる場合はありますが、基本的に「業務起因性」と「業務遂行性」が必要とされるため、災害時に復旧工事や救助に出動した事業者・ボランティア参加者が起こした事故や、業務として発注される前に事実上調査を開始している時点での事故などは「業務起因性」や「業務遂行性」が認められず、労災の対象とはならない可能性があります。また、業務災害に当たる可能性があるとしても、指揮監督関係が必ずしも明確ではない災害救助の場面においては、業務上災害とならない可能性もあるため注意が必要です。

※AIG損害保険「新・担い手3法の成立や最近の傾向からの災害時において建設業者が負う民事責任と補償について」より

今回のまとめ

2019年には担い手3法(「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」「建設法」「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」)の改定が行われており、防災協定の締結・復旧工事の発注等の場面においては、労災上乗せ補償や賠償保険に適切に加入しているかが重要な要素となっています。大規模災害発生時には早期の復旧工事が期待されますが、緊急支援活動中に地震に見舞われてしまう可能性もあるため、事前に備えておくことが必要です。そのような場合に備えるために、防災協定に基づいて災害復旧工事を行う際の補償を強化する「防災協定プラン」を取り扱っている保険会社があるのをご存じでしょうか。復旧工事における「賠償事故」や「労災事故」について気になる方は、お近くの保険代理店までお気軽にご相談ください。

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