お知らせ・コラム
新・担い手3法「防災協定」とは
国内の災害が頻発かつ激甚化していると言われていますが、この10年間を振り返っても、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)や2016 年の熊本地震のような大地震、気候変動による台風の大型化や豪雨の頻発など、数多くの災害が人々の生活を脅かしています。今後、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震の可能性なども指摘されています。毎年ほぼ確実に発生する各地域での自然災害の被害を最小限に留めるための事前準備や、迅速にライフラインを復旧するための仕組みが必要であり、今後予想されうる大災害への対応を含めた防災体制の充実・強化は自然災害多発国の日本にとって最重要課題の一つとも言えます。こういった中、地元の建設企業で組織された建設業組合と防災協定を締結し、災害応急対策の実施体制の強化を図る自治体が増加しています。災害時の活動を十分に行うためには、万一の事態に備え、災害発生時の活動に関するリスクマネジメントや事前のプランを平時に作成しておく必要があり、緊急組織体制、安全対策や実行プランの準備をしておくことが重要となります。ここでは、防災協定について、災害支援活動時のリスクマネジメントについて見ていきたいと思います。
【目次】
1. 防災協定について
2.リスクマネジメントの考え
3. 今回のまとめ
防災協定(災害協定)について
【防災協定】
日本は、国土の条件として、災害を受けやすい自然的環境であることが指摘されています。南北に長く続く日本列島は、夏から秋にかけて南方海上で発生する台風の進路に当たることから毎年のように被害が発生しており、また、山が多く平野が少なく河川の勾配が急であるため、大雨により川が氾濫しやすい地形であるうえ、さらに、太平洋環状火山帯の上に位置するために過去幾多にわたる火山の噴火や地震による被害が発生しています。2011年の東日本大震災や2016 年の熊本地震、2019 年の令和元年東日本台風などこれまでになかったような自然災害の頻発化・激甚化が見られるところです。47都道府県建設業協会は、災害への迅速かつ的確な対応のため、国や都道府県との間で「災害協定」を締結しており、災害が起こった際には、災害協定による要請に基づき、災害復旧支援活動等を実施しています。また、広域にわたる大規模災害時においては、所在地域の地方整備局からの要請に基づき、都道府県という行政区分を越えて、地方整備局管内及び管外における被災地域への作業員や資機材等の広域支援も実施しています。国・地方公共団体等と建設業者の間で締結される災害時の協力体制・防災活動に関する取り決めのことを防災協定といい対象の地域で災害が発生した際、優先的に復旧工事等に従事する旨の内容になっています。
リスクマネジメントの考え
一般的に、建築工事中に第三者に損害を与えた場合(工事中に隣地建物や隣地居住者を傷つけた場合等)には、不法行為(民法709 条)に基づき損害賠償責任を負う可能性があります。請負業者が災害の復旧工事(救援)を請け負った場合であっても、当該作業によって第三者に損害を与えたときには、同様に不法行為責任を負う可能性があります。災害(自然災害)による事故においては、その災害規模が想定外に大きかったことや、拠るべき施工上の基準がなかったことなどを理由に、事故を予見できなかった、回避することができなかったとして、過失の存在が否定され、責任が否定されることがあります。もっとも、当該業者に過失があったか(責任を負うべきか)どうかの判断においては、復旧(救援)時における状況の特殊性を考慮される場合があります。ここで注意しなければならないのは、現時点においては、東日本大震災、大型台風や洪水等を経験した現在の知見によって判断されるということです。
【災害時の第三者賠償リスクと責任負担】
一般的な業務中の事故ではなく、復旧工事・災害救助・ボランティアに従事している中で、第三者の所有建物を毀損させてしまった場合、または第三者に怪我を負わせてしまった場合であっても、それが無償の活動であったことを理由にただちに責任を免れるということにはなりません。ボランティアが無償の奉仕活動であるからといって、その故に直ちに責任が軽減されることはなく、通常人であれば尽くすべき注意義務が要求されると判断した裁判例があります(東京地判平成10 年7月28 日判例時報1665 号84 頁国土交通省が防災協定(災害協定)のサンプルとして公表している例を見ると、第三者損害が生じた際についても取り決めがなされていることがわかります。請負業者が協力要請に従い出動した際に第三者に損害を与えた場合には、かかる規定に従い、発注側と受注側で損害を負担することになります。
【建設業法等改正(新・担い手3法)】
・建設業法<施行:2019年9月(一部規定)>
・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)<施行:2020年10月>
・公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)<施行:2019年6月>
上記三点の法改正の目的の一つに「災害時の緊急対応の充実強化、持続可能な事業環境の確保」があります。法改正により防災協定の活用が進むとともに、今後、防災協定に基づく活動が増加されることが予想されます。
今回のまとめ
これから先、復旧工事・救助等の必要が生じることは、当然想定しておかなければなりません。そのような現場において、これに従事することを求められた場合には、安全配慮義務を果たすとともに、新たな状況に対しても対応することができる体制を整えておくことが必要となります。天災時の対応プランや、防災協定に対応できるプランを扱っている保険会社もございます。万が一に備え、一度お近くの代理店へご相談してみてはいかがでしょうか?
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