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ギグワーカーが抱える労働問題を考える
タブレットやスマートフォンなど、人々の生活には通信技術(ICT)が不可欠となりました。そういった技術により急成長したのが、「ギグエコノミー」とよばれる新しい働き方です。インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方をベースとした仕組みで働く人は「ギグワーカー」と呼ばれており、企業に雇用されているのではなく、フリーランス又は個人事業主として仕事を受注しています。皆さんもよくご存じのフードデリバリーサービスである「ウーバーイーツ」の配達員も「ギグワーカー」です。今回は、そんなギグワーカーが抱える問題に焦点をあててみました。
【目次】
1.ギグワーカーが抱える労働問題
2.全治3か月でも休業補償なし
3.配達員の「労働者性」が2022年11月日本初認定
4.今回のまとめ
ギグワーカーが抱える労働問題
コロナ禍でフリーランスが増加し、1年以内にフリーランスになった人は517万人(2021年2月調べ)。2020年の同時期の調査の320万人からおよそ200万人も増えています。しかしフリーランスは、災害時の補償や失職時の生活補償などが雇用労働者に比べて脆弱であることが問題となっています。フリーランスの中でも今、事故やトラブルを起こしやすいのが、コロナ禍で活況を呈しているフードデリバリーサービスの配達員です。
コロナ不況で退職を余儀なくされた人が相次いで参入し、フードデリバリーの配達員は今でも増え続けていますが事故やトラブルも必然的に増えています。実際配達員の事故というのはどのぐらい発生しているのでしょうか。配達員で組織するユニオンが「事故調査プロジェクト報告書」(2020年7月21日)を出していますが、報告のあった事故31件のうち、最も多かったのは「衝突事故」の25.8%、次いで「転倒事故」(22.5%)、「追突事故」(16.5%)、「接触事故」(12.9%)の順となっています。このような仕事で問題なのはケガによって就業できなくなることです。
全治3か月でも休業補償なし
30代男性が、小型二輪で夜のフードデリバリー中、交差点で左折する際に前の車が停車しバックしてきたため接触、転倒し、全治3か月のケガを負いました。治療費は事故の相手方の任意保険から出ることにはなりましたが交渉は難航しました。
またその際弁護士にも相談しましたが、休業損害については「雇用されている仕事ではなく、損害の根拠がない」として認められませんでした。全治3か月にも関わらず、ギグワーカーは個人事業主扱いなので民間の保険に頼るしかなく、その間就業できなくても生活するのに必要な休業補償も出なかったのです。これが例えば会社に雇われている人であれば、加入している車両保険の担当者が示談交渉を行い、ケガを負った本人も労災保険によって満額の治療費が支給され、休業補償によって給与の8割が仕事に復帰するまで支給されたでしょう。このように、ギグワークは労働災害の際の補償がほぼなく不安定な業務形態なのです。
配達員の「労働者性」が2022年11月、日本初認定
東京都労働委員会は2022年11月25日、フードデリバリーの配達員を労働組合法上の「労働者」として認める判断を下しました。都労委が、ネット上で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働者と認定するのは日本初の事例となりました。今回、冒頭の判断を下したきっかけは、両者の紛争にあります。配達員でつくる労働組合は、ある運営会社に処遇改善に向けた団体交渉を申し入れてきましたが、運営会社は「配達員は個人事業主であり、雇った労働者ではない」という理由で拒否していました。それを受けてユニオンは2020年3月、都労委に不当労働行為の救済を申し立てました。争点となっていたのは「配達員が、労働組合法上の労働者であるかどうか」という点でしたが都は、同社が配達パートナーの業務遂行性に様々な形で関与していたとし、結果、配達員を労働者として認め、団交を受け入れるように命令しました。
【ユニオンが団交を申し入れた理由】
(1) 運営会社の対応の不誠実さ
(2) 事故時の補償の脆弱さ
(3) 就業中止などのリスクの予測不可能性
(4) 配達員が受け取る料金体系の不明確さ
なお、事故の補償に関しては、運営会社は民間の損害保険会社と提携し、配達員の傷害見舞金制度を独自に設けていますが、医療費用の上限を50万円、1日7500円の見舞金を上限60日支給するなどの規定はあるものの、2か月以上の補償はされないなど、まだまだ補償としては不十分と言わざるを得ません。
今回のまとめ
2021年より、フリーランスなどが加入する労災の特別加入制度の対象が、フードデリバリーなどを行う配達員にも拡大されました。まだまだ日本では労働者性が認められにくいギグワーカーですが、特別加入制度に加入することで、労働中のケガや病気に備えることができます。自費での加入にはなりますが、ケガなどにより長期休業などをよぎなくされる場合を考えると加入しておくことも検討すべきです。また労災特別加入制度はあくまで労働中の自分自身のケガや病気に備えるもの、相手に損害を与えた場合やプライベートでのケガや病気には、また別の備えが必要です。民間の保険などもうまく活用しながらギグワーカーの方も安心して仕事を続けられる環境を整えましょう。
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