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認知バイアスとヒューマンエラーの関係と損害保険の備え
認知バイアスという言葉をお聞きになった事はありますでしょうか?認知バイアスとは目の前の実態が正確に把握できない、本来の姿とは異なった姿にとらえてしまうことを言います。認知バイアスが生まれる要因としては、過信、楽観、社会的手抜き、グループシンクなどがあります。今回は認知バイアスをとりあげつつ、認知バイアスがどのように労災に関わっているのか、また対策や損害保険の備えについて解説していきます。
【目次】
1.熟練者に多い過信や事故なんかおきないという過小評価は労災につながる
2.現場責任者のリーダーシップによる対策と損害保険の備えとは
3.今回のまとめ
熟練者に多い過信や事故なんかおきないという過小評価は労災につながる
熟練者に非常に多い過信についてですが、過信とは自らの判断や行動は正しいと信じ、それが認知バイアスとなり、無理な行動をしてしまうことです。※バイアスとは「偏りを生じさせるもの」をいい、認知バイアスとは物事の判断が直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象をいいます。
現場の安全の確保には長年の経験を積み重ねた熟練者の活躍が不可欠です。そして過信による熟練者ならではの労働災害があることを把握しましょう。
それは、現場の作業を熟知しているがゆえに上に立つ者の責任感の強さも相まって現場の進捗などに支障が出ると「早く支障を取り除かなければ」「解決策が分かっている自分がやる」という気持ちが大きくなり、「自分なら大丈夫」と過信によって不安全な行動をとってもやむを得ないと考えてしまうものです。しかし若いころとは違ってさまざまな心身機能は衰えているのでそれが原因で被災してしまいます。実際に中堅作業者30代、熟練者を50代とする年代比較を行うと50代は30代よりも5割ほど高いデータもあります。
□「事故なんか起きない」と過小評価するととんでもない
楽観とは
楽観とは作業を進めていくうえで必要なものともいえます。楽観視すればストレスを感じることなく判断や行動をとることができ、作業の推進力にもなるからです。しかし、現場に潜んでいるリスクを楽観的に過小評価してしまうと思わぬ災害を招くおそれがあります。世界中にコロナ禍が広がる中で、アメリカなどではマスクを着用せずに日常生活を送るようになってきていますが、日本の感染症の専門家からは、感染リスクに対し楽観視しすぎではないかとの指摘がなされています。
典型的な労働災害の発生原因に楽観バイアスというものが大きく関わっています。例えば「つり荷の下には入らない」「稼働する機械には近づかない」「高所作業では墜落制止用器具を使用する」などの基本ルールを定め、それらの順守によって現場の安全を確保しようとしても、楽観バイアスによって、つり荷の落下、機械へのはさまれ、巻き込まれ、高所からの墜落などのリスクに対し、「落ちてこないよ」「はさまれるわけがない」「落ちないわ」などと過小評価してしまいます。交通事故の多くも、楽観視からスピードの出し過ぎや漫然運転、横着なハンドル操作など不安全な運転が生まれ、それが原因となってしまっています。これらの災害は、長年にわたり楽観によって過小評価し続けた結果、現場の典型的な労働災害となってしまっています。
□好都合な情報ばかりを取り入れる
好都合な情報ばかりを取り入れることも認知バイアスにつながります。具体例としては、他人の不安全行動をみて、「あの人もやってるから、きっと問題ないはず」と認知バイアスが生まれ、自分も不安全行動を躊躇なく行ってしまう恐れがあります。
□社会的な手抜き
社会手抜き(組織・グループ内ですべき活動があっても、他の誰かがやると思い自分ではやらない)について、現場の安全活動に直結するものには整理整頓が挙げられます。作業をするものひとりひとりが率先して整理整頓に努めなければなりませんが、「後で誰かがやるから」という気持ちが芽生えると現場は乱れ始め、つまずく物が散乱してしまいます。
□グループシンク
グループシンク(集団欠陥)になると、グループの目標(生産目標、工期など)の達成のためには、不安全行動やむなしという雰囲気に陥り、現場では誰も不安全行動、不安全状態の放置などを注意しなくなり、労働災害がいつ発生してもおかしくない状態となってしまいます。建設現場ではとても厳しい工期(突貫工事)に間に合わせようとするあまり、このような状態に陥ることもあります。※安全スタッフ2022/6/1号参照
現場責任者のリーダーシップによる対策と損害保険の備えとは
では次に認知バイアスによる労働災害を防ぐために必要なものを取り上げていきます。
認知バイアス対策としては現場責任者のリーダーシップが必要だといえます。
認知バイアス対策として
①バイアス(かたより)を正常な状態に戻すこと
②バイアスが生まれることを前提に対策を講じること
上記の二つがあげられます。このうち①の対策は不安全な状態に敏感になりバイアスを生み出さないようにすることです。そのためには安全教育が重要です。社内の安全教育の手助けとして損害保険代理店が保険会社とともに協力しておこなう安全教育もうまく利用していただくと、普段の安全教育に加えて労災事故の事例や性格診断などから参加者の意識向上に役立つかもしれません。また②の対策は、現場をより安全な状態に保ち、認知バイアスにより不安全な行動が生まれたとしても、不安全な行動が労働災害に繋がらないようにすることです。いずれも「守るべきルールは断固として守り抜く」というような緊張感のある現場が必要となり、実現するためには現場責任者のリーダーシップが強く求められます。また、事故による損害の備えとして工事の賠償保険や任意労災など、現場で起きうる事故リスクに応じた損害保険があります。
今回のまとめ
認知バイアスや典型的な労働災害の背景にある楽観バイアスなどご理解頂けたと思います。これらからの労災事故や現場の事故を防ぐためには守らせ、守り抜くための現場責任者の強いリーダーシップが重要となります。今一度意識を高めて安全な現場づくりをしていきましょう。
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