お知らせ・コラム
運転者の教育徹底し、交通災害防止へ
労働死亡災害のなかで2番目に多い、道路走行中の交通労働災害。建設業をはじめ、運輸交通業、小売業など業種を問わず業務中に多くの事故が発生しています。事故を防ぐためには安全運転を徹底させると共に、運転中の危険についての教育も欠かせません。車を使用する企業では、交通事故を削減するためにどのような取り組みをしているのでしょうか。みてみましょう。
【目次】
1.交通事故による死者は建設業が最多
2.事業者が取り組む安全運転教育とは
3.アプリを活用して運転分析も
4.今回のまとめ
交通事故による死者は建設業が最多
令和2年に発生した死亡労働災害のうち、道路上での交通事故を原因とするものは全体の死亡災害の約2割を占めており、墜落、転落に次いで多い災害でもあります。仕事のために工事現場へ向かう途中や、作業後に帰社している時など、建設業では会社と工事現場への往復中の発生が目立ちます。道路交通法では、自動車を5台以上(乗車定員11人以上は1台)もつ事業所には安全運転管理者の選任が義務付けられており、安全運転管理者は運転に従事する従業員への安全教育や安全運転のための必要な指示を日頃から行っておく必要があります。
◇改正道路交通施行規則により安全運転管理者は下記の業務が義務化されます
【令和4年4月1日施行より】
〇運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより運転者の酒気帯びの有無を確認すること
〇酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
【令和4年10月1日施行より】
〇運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器を用いて行うこと
〇アルコール検知器を常時有効に保持すること
※詳しくは各県警HP等でご確認ください
事業者が取り組む安全運転教育とは
労働者に自動車などの運転を行わせる事業者向けに厚生労働省が示した「交通労働災害ガイドライン」では、法定の雇入れ時の教育のほか、安全運転の知識と経験が豊富な運転者の添乗による交通法規や運転時の注意事項、走行前点検の励行などの実地指導、関係団体が実施する講習会への参加などにより運転者に交通労働災害防止に関する知識を付与することとされています。事故防止のための教育では、交通危険予知訓練(交通KYT)が効果的です。
実際の運転場面を想定したイラストや写真を使い、運転者に交通労働災害の潜在的危険性を予知させます。予知した危険に対する具体的な防止策を考える中で安全を確保する能力を身につけさせます。また警察からの交通事故発生情報や交通事故の危険を感じた事例、デジタル式運行記録の確認、ドライブレコーダーの記録などから判明した情報などに基づき、危険箇所、注意事項を示した交通安全情報マップの作製なども有効です。
アプリを活用して運転分析も
東北に本社を置くある建設会社では、令和3年度の方針として、交通事故対策を重点事項に掲げ、社員、協力会社の通勤や業務中の交通事故や災害対策に取り組んできました。社内に設置したワーキンググループが中心となってハード・ソフト両面からの対策を推進し安全運転講習会とドライブアプリの導入によって、事故件数が3分の1に減少しました。取り組みの背景には、同社で発生した交通事故の増加があります。支社を含め毎年10~15件程度で推移していた交通事故件数が2020年には25件に急増しました。重篤な事故にはいたっていないものの、通勤時や現場に行く途中のもらい事故、スピードの出し過ぎや凍結によるスリップ、わき見運転などが多かったようです。不注意による交通事故防止のためには、基本的な交通ルールの順守の徹底、信号のない交差点での徐行や車間距離の確保の厳守、またもらい事故防止では、早めの方向指示や早めのブレーキ操作、渋滞時の早めのハザードランプ点灯により、後方車への注意喚起に努めるように運転者への周知を徹底しました。降雪の多い雪国特有の危険も多く、冬季運転時には「急発進、急ブレーキ、急ハンドル」を禁止するよう指示し、雪道、氷点下環境、夜間走行などの走行は路面状況を想定し速度の抑制、2倍の車間距離、早めのブレーキ操作、また余裕をもった出発を心がけるような指導をしています。ハード面では、運転状況をリアルタイムで記録するスマートフォン用のドライブレコーダーアプリを導入しました。出発前にアプリの運転開始ボタンをタップするとGPSと道路標識情報、過去の交通事故箇所の情報から、車両の位置情報と交通ルール順守状況を自動で記録して管理者に報告します。道路交通法をどれだけ守れているかを可視化し、安全性の高い運転を継続することで事故リスクの低減を期待するものです。例えばスピードを超過した区間は地図上に色つきで表示されることで、運転者への教育や注意喚起に利用できます。こうした取り組みの結果、運転者の意識面に大きな変化がみられ、令和3年度の交通事故件数は「8件」と、前年度の3分の1に減らすことができました。
今回のまとめ
業務中に事故が起これば企業責任を問われ、金銭だけでなく、企業の信用の低下や風評被害を受ける可能性もあります。自動車保険などに加入することで事故後の対応や補償はとても大切ですが、事故を起こさないことはそれ以上に大切です。最近では保険会社から法人に特化したドライブレコーダー等も出ており、運転状況からドライバーの心理や状態を分析し記録、事故のリスクをリアルタイムに把握することで事故そのものを効果的に防ぐことが期待できるものです。こういったシステムも上手に活用しながら、企業と従業員の皆様の安全を守っていくのが企業経営上も重要です。
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