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【運送業で基準改正】健康診断未受診者の事故が行政処分追加となりました
国土交通省による行政処分の対象が、運送業において追加されました。内容は事業者が健康状態の把握を適切に行わなかったために、運転者が脳・心臓疾患などで重大な事故を発生させたような悪質な違反について行政処分の基準が改正されました。今回はその背景と改正の概要について解説していきます。
【目次】
1.運送業の行政処分の改正に至った背景
2.今回の運送業の行政処分の改正について
3.企業の健康診断は法律で義務化されています
4.今回のまとめ
運送業の行政処分の改正に至った背景
行政処分の対象に追加の通達施行は4月1日。トラック、バス、タクシーなどの自動車運送事業の運転者が疾病によって「事業用自動車の運転を継続できなくなった事案」として、自動車事故報告規則に基づき報告される件数が増加傾向となっています。報告中、運航の中断など、交通事故に至らなかったケースが大半を占める一方で、運転中に操作不能となった事案も2割と目立っています。道路運送法第27条第2項と貨物自動車運送事業法第17条第2項の規定により、「事業者は、事業用自動車の運転者が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で事業用自動車を運転することを防止するために必要な医学的知見に基づく措置を講じなければならない」とされているものの、必ずしも順守されていない事例が度々あります。
そのような背景もあり、国土交通省では、事業者が運転者の健康状態の把握などを行わずに重大な事故を発生させたような悪質な違反について行政処分の基準を改正しました。
今回の運送業の行政処分の改正について
今回の行政処分の追加について、簡単に表現すると、『健康診断をしっかりと行い、健康配慮、健康状態の把握を適切におこなってくださいね!』という思いの元、施行されています。
健康起因事故は、「運転者が脳疾患、心臓疾患および意識喪失により生じた重大事故」をいい、事業者が「運転者の事故発生日から過去1年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合」などに適用するとしています。
【改正概要】
以下の違反を新たに行政処分の対象に追加する。
・未受診者による健康起因事故が発生したもの(注1)(注2)
初違反40日車 再違反80日車
(注1)健康起因事故とは、当該運転者が、脳疾患、心臓疾患および意識喪失により生じた重大事故をいう
(注2)事業者が、当該運転者の事故発生日から過去
【現行の行政処分】
現行の行政処分の基準では、疾病、疲労などの恐れがある乗務により未受診者1人の場合に、初違反は警告、再違反は10日車となっています。
【改正後の行政処分】
改正後は、初違反で自動車の使用停止日数が40日車、再違反で80日車となります。
運転者の健康状態に起因する事故報告件数の推移をみると、
平成28年304件
平成29年298件
平成30年363件
令和元年327件
と近年増加傾向にあります。そのうち衝突・接触を伴うもので、死傷者が生じたものに関しても順に
15件
21件
18件
23件
と多くなってきています。
今年1月に公表された事業用自動車事故調査委員会の調査報告書によると、この種の事故は事業者の健康管理が行き届いていないために引き起こされていることがわかります。
※安全スタッフ参照
【健康診断未受診者による事故事例】
平成30年10月に神奈川県横浜市で乗合バスの運転者が高架橋支柱に衝突後、乗用車に追突した事故では、運転者が体調異変に気付いた後も運行を続けたために意識を消失してしまいました。運転者は日常生活で複数回の意識消失を経験していましたが会社に申告していなかったとのことです。事業者は意識消失の経験や運転に支障を及ぼす恐れのある既往症の有無など健康状態の把握を怠っていたことが判明しました。
企業の健康診断は法律で義務化されています
労働者を対象とする健康診断を実施することは、企業の義務ということで定められています。【労働安全衛生法第66条1項】
健康診断には2種類あり、『一般健康診断』と『特殊健康診断』があります。
一般健康診断とは
常時雇用する労働者の健康状態を把握して適切な対応をし、生活習慣病や脳、心疾患を防止することを目的としています。
特殊健康診断とは
有害な業務に従事している労働者の健康管理が目的となっています。
また、企業サイドだけではなく、労働者側にも健康診断の受診義務はあります。よって労働者が健康診断を拒否して受診をしてくれない場合には、懲戒処分にする権利も認められているようです。ただし、労働安全衛生法では労働者に対して『健康診断を受ける医師選択の自由』を定めているため、個別で健康診断を受け企業に結果だけを提出するという方法も認められています。
労働安全衛生法で規定されている健康診断を実施しない場合には、労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金が科せられる可能性もありますので注意しましょう。
また、保険代理店の観点から申しあげますと、健康診断によりお病気などの兆候がみられ、従業員が入院するケースもかんがえられるので、無記名無告知で加入が可能となり、プランの見直しが割と自由な民間の保険会社の労災の上乗せ保険によって、おケガの備えだけではなく、業務上疾病や私病の手当ても考えて準備していただくと、福利厚生として従業員様に喜ばれるでしょう。
今回のまとめ
そもそも、健康診断を受診することは企業の義務として労働安全衛生法で定められています。それでも法をまもれず、未受診による重大な事故が増えている、という背景から今回の法改正に繋がった背景がみてとれます。従業員様の健康に対して、経営者は意識を高く配慮し、良き備えを充実させていくことも、それが皆のやる気に繋がり、将来的に売上を増加させていくことになるのかもしれません。心掛けていきましょう。
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