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なぜ労災上乗せ保険は小売り・サービス業でも必要なのか

なぜ労災上乗せ保険は小売り・サービス業でも必要なのか

労災上乗せ保険は、国の労災(政府労災)の補償を補完するために各企業が任意で入る民間の任意労災保険の事です。建設業や製造業など作業中に事故にあう危険性が比較的高い業種では、多くの企業様が加入しています。ただ近年ではケガのリスクが低いとされる小売業やサービス業の会社様でも労災上乗せ保険の必要性を感じてご加入される企業様が増えてきておりますが、その大きな理由の一つに業務上疾病での労災認定の広がりがあります。

今回はケガのリスクが少ない小売業やサービス業で実際に起こった労災訴訟の実例をあげながら、労災上乗せ保険について考えていきたいです。

【目次】

1.過労による脳梗塞での労災により9076万円の高額な損害賠償が起きている

2.労災上乗せ保険で万が一の労災事案に備える

3.今回のまとめ

 

過労による脳梗塞での労災により9076万円の高額な損害賠償が起きている

一見ケガなんて起こる可能性が低いから大丈夫とも思われる業務内容でも、疾病からの労災認定により高額な賠償事例も起きています。

自動車販売業者で起きた高額賠償事案の概要

新車や中古車の卸小売販売を扱う株式会社Aは、鹿児島に本社があり社員は25人ほどの会社で自動車販売の他にもロードサービス事業を行っていた。

平成21年4月に、店舗の店長として勤務していたX氏が脳梗塞となり救急搬送され、一命はとりとめたが重度の後遺障害を残した。X氏は高次脳機能障害と身体障害があり身体障害は右上肢麻痺、右下肢麻痺というもので後遺障害等級は併合して2級とされ随時介護を要するものと認定された。

A社ではタイムカードによる労働時間管理を行っておらず、従業員は毎日、日誌に当日の業務内容をつけることになっていた。

事故の発生原因は株式会社Aによる長時間労働であるとのことで労災認定

事故がおきてしまった、業務上疾病が発生してしまった場合、その直近の長時間労働を疑われることがあります。今回のケースでも発症前の6か月を見てみるとかなりのハードワークだったことがわかります。一か月の残業が80時間でイエローカードと考えると、下記の時間を見ると、、ゾッとしますね。

脳梗塞が発病する前のX氏の時間外労働時間

発症前1カ月目 150時間15分

発症前2カ月目 175時間30分

発症前3カ月目 188時間15分

発症前4カ月目 171時間00分

発症前5カ月目 179時間15分

発症前6カ月目 184時間45分

 

X氏は発病前6カ月間の月平均で174時間50分の時間外労働を行なっており、医学的に恒常的な長時間労働の負担が一定期間続き疲労が蓄積されると血管病変などが通常の自然状態に比べて増悪されその結果、脳梗塞などの脳血管疾患を発症させることがあるとされている。

発症前1カ月間でおおむね100時間または発症前2カ月前~6カ月前において、1か月間でおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いとされています。

また、業務開始から業務終了までの時間の多くを本店店舗の外で待機するなど発症前の数か月間に渡り寒冷な環境で業務を行っておりこのような作業環境も脳血管疾患の発症の業務起因性を判断するうえで重要な要素となった。

安全配慮義務違反

株式会社Aでの長時間労働と仕事の内容がX氏の脳血管疾患の発症における原因(業務起因性が有る)と判断され、H26年4月労働基準監督署より障害補償年金と介護補償が支給されている。

Ⅹ氏とその家族は株式会社Aおよび同社代表取締役に対して、安全配慮義務違反と会社法429条1項に基づき損害賠償請求訴訟を提起した。

株式会社Aおよび同社代表の反論

業務と発症との因果関係についても争点となった。X氏は発症当時いわゆる肥満体系であり基礎疾患として重症高血圧症および高脂血症を有していたことが認められている。しかし発症当時、X氏は38歳であり上記疾患があったとしても外部の要因が無く自然経過により脳梗塞を発症するまで悪化するするとは考えられないとして、業務と発症との因果関係は認められるべきであると判断された。

また、店長という立場上であったので業務の裁量性が他の社員よりも有しており、雑務などを他の部下に行わせることが出来たとの主張もあったが、X氏の業務時間・業務内容・業務遂行内容などから他の従業員よりも広範囲な裁量を有しているとは認めるに足る証拠はないと判断された。

上記の反論により基礎疾患による減額は2割ほど認められたが、約9076万という巨額の損害賠償金の支払いが命じられた。  (※安全スタッフ参照)

労災上乗せ保険で万が一の労災事案に備える

上記のような事例が起こった時に労災上乗せ保険でできる事について、触れていきます。基本的に労災の上乗せ保険はオーダーメイドができるので必要だと思わるる補償をピックアップできますが、それぞれについて解説します。

入院や通院についての備えをオーダーメイド

業務中のケガによる入院や通院の補償が付帯されている場合でも、通常は持病が原因での脳梗塞の様な病気での入院に対しては補償が出来ません。しかし労災認定がおりた業務が原因での疾病に関しては業務上疾病として労災の上乗せ保険でも補償の対象としている保険会社の商品もありますので確認してみて下さい。また、労災認定の有無にかかわらず従業員さまの病気入院を補償できる新商品の保険もありますので気になる方はご連絡ください。

死亡保険金と後遺障害保険金について

死亡保険金や後遺障害保険金についても、業務上疾病を補償している労災上乗せ保険であれば労災認定がおりた事案に対してはお支払いが可能です。

被災者やその家族に対して死亡保険金や後遺障害保険金などでまとまった金額を慰謝料として早めにお支払いすることにより早期の解決につなげることが出来ます。

使用者賠償責任保険で万が一の高額賠償に備える

労働者が業務により身体に障害を負った場合、安全配慮義務違反(事業主が安全な職場を提供する義務)により事業主に対して損害賠償請求を提訴する可能性があります。上記の案件では賠償金額は約9000万円と巨額になっております。

そのよう高額賠償に対応しているのが使用者賠償責任保険になります。1億円から10億円の保険金を設定することにより、万一の高額な賠償請求に備える事が出来ます。

今回のまとめ

従業員さんを雇う事により業務の幅がひろがり、売り上げや業績のアップも期待できます。しかし同時に従業員さんを雇う事によりリスクも発生します。その中のリスクの一つに業務災害があり、以前であればケガのリスクだけでしたが、現在では法律や社会の変化などもあり従業員さんの身体や精神の健康も会社の責任となって来ました。

小売りやサービス業さまで、うちは怪我がないから労災上乗せや雇用関係の保険は必要ないと言うお声を頂くことがありますが、仮に労災訴訟等で訴えられてしまうと高額な損害賠償金を会社と社長個人に請求されてしまう可能性がございますので、保険の加入の有無にかかわらず内容だけでも確認しておく事をお勧めしております。